イカについて

イカの栄養と機能成分

1. 注目される日本型食生活

和食の献立は、「日本型食生活」と言われ、肥満が社会問題となっている国々から注目されています。

(1) 栄養のバランスがよい

健康保持に最も望ましい比率は、摂取エネルギー当たり、タンパク質(P):12〜13%、脂肪(F):20〜30%、炭水化物(C):57〜68%といわれています。和食中心の献立は、P:約15%、F:24%前後、C:約61%となり、理想的な栄養比率であるのに対し、欧米型の食生活は、脂肪の比率が高く、炭水化物の比率が低くなっています。

(2) タンパク質のバランスがよい

タンパク質は、動物性と植物性にわかれます。タンパク質の内訳は、動物性:植物性=1:1が理想的なバランスです。現在、日本人の動物性タンパク質摂取量の平均は約54%。欧米人の65〜75%に比べ、かなり低い値です。動物性タンパク質の中でも水産物由来タンパク質の割合は約44%。欧米人の5%に比べて、日本人が多く魚介類を摂取しているのかがわかります。

表1 栄養素等摂取量(1人1日当たり)
1975
昭和50
1980
昭和55
1985
昭和60
1990
平成2
1993
平成5
1995
平成7
1996
平成8
1997
平成9
エネルギー (kcal)2,2262,1192,0882,0262,0342,0422,0022,007
タンパク質総量(g)81.078.779.078.779.581.580.180.5
動物性(g)38.939.240.141.442.244.443.143.9
動物性タンパク質比(%)48.049.850.852.653.154.453.854.5
動物性タンパク質中の魚介類(%)23.624.023.623.723.823.223.623.8
*(%)49.248.246.545.044.842.643.943.7
肉類(%)14.115.216.116.416.618.317.518.0
**(%)29.430.531.731.231.333.632.533.0
脂質総量(g)55.255.656.956.958.159.958.959.3
動物性(g)26.226.927.627.528.329.829.329.7
炭水化物 (g)335309298287285280274273
*…魚介類タンパク質比(%)/動物性タンパク質比(%)×100
**…肉類タンパク質比(%)/動物性タンパク質比(%)×100

2. 日本型食生活に欠かせない食材—イカ

脂肪は、脂質内容によって体内への役割が大きく異なります。一般に畜肉の脂質には飽和脂肪酸が多く含まれ、これを過剰に摂取すると動脈硬化症、脳卒中などの循環器系疾患が発症しやすくなります。一方、魚介類の脂質にはイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸が含まれており、上記疾患の予防効果があるといわれています。日本型食生活がよいといわれるのは、魚介類を多く食べ、不飽和脂肪酸の摂取が多いことも理由の一つ。魚介類の中でも、消費量が最も多いイカは、日本型食生活に欠かせない良質の食材です。

3. イカのタンパク質 1 —アミノ酸スコアが高い

タンパク質の栄養価の基準となるのが、アミノ酸スコア。これは、必須アミノ酸の必要量と、食品に含まれる必須アミノ酸(※)の量を比較し、タンパク質の性能を示したものです。アミノ酸スコアの最高値は100で、数値が高いほどその食品に含まれるタンパク質の栄養価が優れていることになります。イカのアミノ酸スコアは100を切っていますが、その要因になっているのはバリンの値が基準値に達していないため。けれども、バリンは日本人の主食である米に多く含まれているため、米飯と一緒に食べれば、100に近い値が期待できるでしょう。
ちなみに、米や小麦のアミノ酸スコアはそれぞれ65と44。これは、リジンがとても少ないため。イカは、リジンを多く含むために「良質なタンパク質源」と言われています。

表2 魚介類可食部タンパク質のアミノ酸組成
必須アミノ酸(mg/g-N)※アミノ酸スコア
イソロイシン ロイシン リジン メチオニン + シスチン フェニルアラニン + チロシン トレオニン トリプトファン バリン
基準値 25044034022038025060310
赤身魚 アジ 29050058026048029070320100
カツオ 27045052027042025079310100
サバ 28048055028046029069330100
サンマ 29049055027046029071330100
ホンマグロ(赤身) 28047054024043027070310100
ハマチ(養殖) 29048055027045028073330100
白身魚 ヒラメ 30052063028050031072330100
カレイ 30054062027049030072330100
サケ 28047055026046026069330100
タラ 29050060026046027065310100
軟体動物 スミイカ、ヤリイカ 2304204202103602305022071
モンゴウイカ 3325585012584963199129094
ヤリイカ 43058357131154331791333100
ジンドウイカ 36158155430558232393310100
スルメイカ 37856860230459833492318100
ホタルイカ 2503703702804202106326084
アサリ 2303904002204002605925081
カキ 2103503802103902405524077
ホタテガイ 2103603702203502404722071
甲殻類 クルマエビ 2204104602104102105423074
毛ガニ 2303904002104002405224077
穀物 精白米 2505002202905802108738065
小麦粉(中力粉) 2204301502604801706325044
※ 必須アミノ酸
人体で合成することのできないために必ず食品から摂取しなければならない9種類のアミノ酸のこと。イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種類。

4. イカのタンパク質 2 — 消化率がよい

表3 魚介類の消化率
種類消化率(%)
スルメイカ(煮熟したもの)93.5
スルメ(皮つき)90.0
ミガキニシン(肉)96.0
スケトウタラ(肉)96.0
カレイ(煮熟したもの)94.0

イカは歯ごたえがあるため、「消化しにくい。胃もたれの原因になる。」と思われがち。けれども、スルメイカで93.5%、スルメで90.0%と他の魚類と大差ないほど、消化率が良いのです。消化率がよいとは、消化器系への負担が少ないこと(胃もたれが起こりにくいこと)を意味します。

5. イカの脂肪 — 低脂肪、そしてリン脂質が多い

表4 イカ外套筋の脂質成分
リン脂質
PL
ステロール
ST
遊離脂肪酸
FFA
トリグリセリド
TG
ステリルエステル
OT
スルメイカ71.719.96.50.81.1
ヤリイカ83.814.81.10.3ND
アカイカ61.815.821.60.10.7
アルゼンチンマツイカ73.115.46.83.21.6
マッコウタコイカ84.03.63.6TrTr
ND:未検出、Tr:Trace level(検出限界以上定量限界未満)

イカの脂肪含量は約2%。魚介類の脂肪は、およそ5%以上なので、少ないことがわかります。

一般に魚介類の脂質はトリグリセリド、リン脂質、糖脂質の三種類にわかれます。魚類はトリグリセリドが多いのに対し、イカはリン脂質が多く含まれていることが特徴です。リン脂質には抗酸化作用があることが認められています。リン脂質の抗酸化作用のメカニズムは、リン脂質中のコリンやエタノールアミンが酸化性物質の一つであるヒドロペルオキシドをアルコールに還元するためだと考えられています。

6. イカのビタミン — ビタミンDを除くすべてのビタミンが存在

イカ中のビタミン含量は多くありませんが、ビタミンDを除くその他のビタミン類はほとんど存在しており、バランスのとれたビタミン供給源となっています。その中でも、ナイアシンが多いことが特長です。イカ100gを摂取すると、所要量の約2割のナイアシン摂取が期待できます。
また、ホタルイカはビタミンB12を多く含んでいます。ビタミンの中で唯一ミネラル(コバルト)を含有し、アミノ酸の代謝、タンパク質の生合成に必要なビタミンB12は、赤身魚で1.3〜10.6μg/100g、白身魚で1.0〜5.9μg/100g含有に対し、ホタルイカは34.4μg/100gと含量が多く、ビタミンB12のよい供給源になっています。

表5 魚介類のビタミン含量(100gあたり)
種類B1
(mg)
B2
(mg)
B6
(mg)
B12
(μg)
C
(mg)
ナイアシン
(mg)
A効力
(IU)
D
(mg)
E効力
(mg)
K
(μg)
赤身魚 アジ 0.120.160.407.514.420950.9
カツオ 0.230.160.878.0Tr19.0174001.2
サバ 0.160.540.579.039.71004401.85
サンマ Tr0.330.5710.625.21204401.9Tr
ホンマグロ(赤身) 0.100.090.851.3210.0202100.8
ハマチ(養殖) 0.060.210.404.818.8403502.8Tr
白身魚 ヒラメ 0.100.200.331.027.0Tr1300.6
カレイ 0.250.400.271.2Tr4.7Tr9201.1
サケ 0.220.170.645.928.42001,3001.3
タラ 0.100.170.112.9Tr1.31000.9
軟体動物 イカ 0.030.050.173.3Tr2.9102.1Tr
ホタルイカ 0.190.270.1434.452.65,0004.7
アサリ 0.010.150.0535.621.5600.9Tr
カキ 0.160.320.0938.942.0551.2Tr
ホタテガイ 0.020.290.0912.212.1Tr0.8
甲殻類 クルマエビ 0.070.040.141.923.3Tr
毛ガニ 0.070.230.211.8Tr2.3Tr
穀物 精白米 0.120.030.1301.400.4Tr
小麦粉(中力粉) 0.120.040.0600.700.4

PICKUP

組合員イチオシの
イカ加工品をご紹介します

全国いか加工業協同組合

〒113-0034
東京都文京区湯島3-14-8
加田湯島ビル6階

TEL. 03-3834-3731

事務局詳細ページへ