イカについて

イカ学Q&A50

イカ漁業編

  • Q25
    日本人はイカ好きだそうですね?
    A

    その通りです。最近の農林水産省の統計によると、日本人は1人あたり1年で1.2kgのイカを食べています。これはマグロとサケの消費量にほぼ同じですが、年によってはイカが第1位となる事もあります。

    日本のイカ類漁獲量(三木による)
    日本のイカ類漁獲量(三木による)
    一覧へ戻る
  • Q26
    日本近海ではどんなイカがどのくらい獲られていますか?
    A

    近海から日本の漁師さんが獲っているイカはおよそ30〜35万トンありますが、最重要種はスルメイカです。1968年にはスルメイカ単独で年間約70万トンの漁獲がありました。現在はおよそ20万トン前後ですが、それでももっとも多獲されるイカで、生鮮だけではなく、するめ(乾製品)、塩辛、さきいかなど種々の加工食品にされています。

    ソフトさきいかの材料など加工品として重宝されたアカイカ(=むらさきいか)は沖合流し網ができなくなって以来、5万トン前後釣られています。

    沿岸のイカは農林水産省の統計には細かい種類まで分類されていませんが、コウイカ類(主流はコウイカ、カミナリイカ、シリヤケイカですが、地方的によってはコブシメ、トラフコウイカ、ウスベニコウイカ、テナガコウイカ、ヒメコウイカなどが市場にあがっています)は多い年では1万トン、少ない年では6,000トンくらい漁獲されています。

    統計上「そのほかのイカ」としてまとめられる主体のケンサキイカ、ヤリイカ、アオリイカのほかホタルイカ、ソデイカなどわが国固有の種類を含んでいて年間5〜8万トンの漁獲がありますが個々の種類の漁獲量は各地方の各魚市場で見なければわかりません。日本人はジンドウイカやミミイカのような小型でローカルなイカまで漁獲利用しますから、数えてみると25種くらいのイカが市場で見られます。

    一覧へ戻る
  • Q27
    イカはどんな方法で獲るのですか?
    A

    沿岸性で海底近くに生活しているコウイカ類は定置網、底曵き網のほか「いか篭」、釣りなどで獲られます。外洋をすみかにしているスルメイカは夜間に漁灯をつけて釣りで獲るほか、沿岸近くに来たものは定置網に入ったり、底曵き網でも漁獲されます。かつては沖合にすむアカイカ(むらさきいか)を流し網で獲っていましたが、サケや海鳥や海獣が混獲されるので国連によって1993年以来禁止されてしまいましたので、また釣りに変わりました。

    漁灯は、昔々は松明でしたが、今は一灯で家庭用電球約40個分にもなるメタルハライドランプを船一杯に灯します。また水中灯も使いますが、最近ではこれらをLEDにして省エネをはかるようになってきました。

    イカ釣り漁船(有元より)
    イカ釣り漁船(有元より)

    イカが本当に光を好んで集まるのかどうか種々議論があります。というのは、イカは一般に夜行性ですから、本来強い光は嫌うはずだからです。実際、スルメイカは強い漁灯の光の輪のなかには集まらず、船の陰のようなところにとどまっています。おそらく光に寄るというより鉛直移動で夜間に浮上してきたイカにとって光に集まったオキアミやハダカイワシなどの餌生物がよく見えるから集まって来るのではないかとも思われます。

    イカを釣るための擬餌針(いかづの)も様々な工夫がこらされています。エビや魚に似せたアオリイカ用の「餌木」は古来から芸術的なものすらあります。最近、釣り人はもっぱらきらきらする橙色系のものが良いとしています。

    スルメイカなどの擬餌針は初期の頃は単純な棒の先に逆茂木状に針をつけたものでしたが、最近は鉛製の軸の上に色糸を巻いたもの、蛍光を発するもの、餌を装着できるようにしたもの、柔らかいビニール製のもの(おっぱい針)、さらに泡が出るようにそれに小孔を開けたもの、内部に電灯を仕込んだものなど色々あります。

    現代ではすべて自動いか釣機つまりロボットがイカを釣るようになり、擬餌針も単純な色彩のものが主流です。イカの大きさによっては針が一重や二重ではなく、何段にも針列があります。

    大群をなさないソデイカは、大きな擬餌針を浮き(初めは空き樽でしたが今は発泡スチロール製)の下に延縄状につけておき一昼夜くらい流しておいてイカのかかるのを待ち受けます。

    一覧へ戻る
  • Q28
    日本人は海外のイカも漁獲利用していると聞きますが、どこでどんなイカを獲っているのでしょうか?
    A
    ヨーロッパコウイカ(もんごういか)
    ヨーロッパコウイカ
    (もんごういか)


    アルゼンチンマツイカ(まついか)
    アルゼンチンマツイカ
    (まついか)


    アメリカオオアカイカ(提供:藤倉克則)
    アメリカオオアカイカ
    (提供:藤倉克則)

    ⑴ 1960年代から、アフリカの大西洋沿岸で日本の遠洋トロール漁船が多い年では3万トンを超えるヨーロッパコウイカ(市場名は「もんごういか」)を獲ってきていましたが、200海里時代になり、1982年には撤退しました。一時、イエメン沿岸から5,000トン内外漁獲された「アデンもんごう」は日本にも分布するトラフコウイカでした。
    その後は少量のヨーロッパコウイカがスペインなどから輸入されましたが、最近の「もんごういか」はタイをはじめとする東南アジアから輸入されていますが、大西洋産のヨーロッパコウイカがいるはずはありませんから、コウイカやアジアコウイカ他複数の種が含まれています。

    わが国の海外いか類の漁獲量(FAO2010から酒井作製)
    わが国の海外いか類の漁獲量(FAO2010から酒井作製)

    ⑵ 1970年代、ニューヨークからニューファウンドランド沖に分布するカナダマツイカを試し釣りで3,500トンくらい、さらにトロール漁船が3万トン近く獲ってきましたが、このイカの資源量の変動が激しく、続きませんでした。

    ⑶ 1970年代後半から1980年代にかけて、日本の大型のイカ釣り100隻以上、トロール船20隻以上もの大船団がニュージーランド近海に出漁し、ニュージーランドスルメイカを1万〜3万トン獲っていて、最高5万トンにまで達した年もありましたが、1990年からはニュージーランドの200海里内の日本への割当はゼロとなってしまい、現在は2隻が、合弁で約500トン程度しか漁獲してないようです。

    ⑷ 1980年代ニュージーランドに替わりアルゼンチンマツイカの大資源の開発が行われ60隻以上の日本漁船が10万トンくらい獲りました。(その頃アルゼンチン、ポーランド、台湾などの外国船の漁獲を合計すると50万トンにもなったといいます。)年々、増減を繰り返し、100万トンに近い大豊漁の年もありましたが、最近はやや水準が低くなり、アルゼンチンの200海里内とフォークランドと公海を全部入れても10万トン以下です。日本は2007年以来アルゼンチンの200海里から閉め出されてしまい漁獲はありません。

    ⑸ アカイカ(「むらさきいか」「ごうどういか」)は「海外イカ」とはいえないかもしれませんが、三陸沖からハワイ沖〜北米西岸までの広い広い北太平洋の公海が漁場です。アカイカは、初めはスルメイカの代替え品として三陸沿岸で、せいぜい2トン弱釣られていましたが、沖合の流し網が用いられていた時代(1983〜91年)は年々平均20万トンも獲られていました。1993年のモラトリアム以後再び釣りに転じましたが、最近はせいぜい2〜3万トンの漁獲となっています。

    アカイカ科(スルメイカ類)の分布域(谷津による)
    アカイカ科(スルメイカ類)の分布域(谷津による)

    ⑹ 最近めざましい開発をとげたのはアメリカオオアカイカ(通称「あめあか」)です。アメリカオオアカイカの主分布域は南米チリ・ペルーの沿岸で、太平洋のほぼ全域に分布するアカイカに比べると分布域がずっと限られています。日本は1971年の試験操業以来、有望資源と眼をつけていましたが、最近はペルーの経済水域内から公海にいたるまで日本と共同で資源開発が進んでいます。2007年には67万トン、2008年には86万トンという史上最大の漁獲量がありました。

    一覧へ戻る
  • Q29
    日本以外でイカを食べている国はどこですか?
    A

    アジアの人はみんなイカが好きです。韓国、中国、タイ、ベトナム、インドネシアなどの人たちはイカを好んで食べています。統計からみると、最近のイカの漁獲量はおよそ300万トンですが、日本を除くと中国、韓国、アルゼンチン、台湾、ベトナム、インド、アメリカ合衆国などが上位(10〜50万トンのレベル)です。

    欧米ではもともとイタリアとかスペインや南米のラテン系の人たちもイカは好きで、スペインのパリヤネグロのようなイカ墨入りの料理は有名です。

    もともとアングロサクソン系の人やスラブ系の人々にはあまりなじみがなかったようですが、アメリカのように東洋人の移民が大勢入り込んだ結果イカになじみ、最近の低カロリー食品の流行などからアメリカ人などもだんだん食べるようになってきたようです。

    一覧へ戻る
  • Q30
    こんなにイカを獲ってしまって将来イカ資源は大丈夫でしょうか?
    A
    アカイカの大漁(提供:(独)水産総合研究センター)
    アカイカの大漁
    (提供:(独)水産総合研究センター)

    世界における魚類もエビ・カニ、貝類なども含めた全漁獲量は1〜1.2億トンですが、なかでイカ類だけを取り出してみると250〜300万トンぐらいです。1968年には日本はスルメイカ単一種で70万トン近くも獲りました。また、国連によるモラトリアム以前には沖合流し網でアカイカを日本・韓国・台湾などで合計35万トン(1990年)も獲っていました。しかし、今では世界各地のスルメイカ類(アカイカ科)8種類を合計しても平均30万トンをわずかに超すくらいです。これに各地の沿岸域から獲れるケンサキイカ・ヤリイカ類(ヤリイカ科)やコウイカ科の漁獲量を加えて250万トンに達するというわけです。

    もうイカは海のなかにいないのかといえば、古典的なFAOのガーランド博士の見積もりによると外洋のイカ資源はおよそ2,000万トンから1億トンあるといわれました。これに対して英国のクラーク博士の5,000万トン、フロリダ大学のヴォス博士の1億〜3億トンという説がありました。

    もっとも新しい推定値は英国のロードハウス博士とロシアのニグマチュリン博士によるもので、外洋表層性イカ(主体はスルメイカ類)の潜在資源量は400万〜6,000万トン、それにクジラ、イルカ、オットセイ、マグロ他の捕食者を支えるものが1.5〜3億トンあるといいます。こういう見積もりには沿岸にすむイカ類が入っていません。

    小型のホタルイカ、深海にすむソデイカ、寒海のドスイカなど日本人は他の国の人が利用しない変わったイカも漁獲利用していますが、それらは世界的な統計に影響するほど大きな漁業ではありません。

    それらの推定値を見るとまだイカの資源はありますが、人間が漁獲して食用に供するためには、身がおいしいことと、成体が漁業として成り立つような海の浅いところに大集群を作る性質のあることが必要です。そういう観点から見れば、スルメイカ類(アカイカ科)は大規模な利用に適したイカです。沿岸のコウイカ類やケンサキイカ類などは発展途上国の沿岸などでも零細な漁業ででも獲られますが、その量はバカになりません。東南アジアや、イカをあまり食べないオーストラリア、アフリカ沿岸にはそういう沿岸性のイカの未利用資源はまだ眠っているものもあると思われます。

    人間が食品としての面からも、経済性の面からも利用できないイカ、たとえば深海性のイカ、他の魚類などと混ざってしか獲れないイカ、ばらばらにすんでいるため経済的な漁獲努力に適さないイカなどはそれらを何とかして利用しようと考えるより、大型の魚類などのようなイカを捕食する者の肉に転換したものを利用するほうが賢明だろうと思われます。

    冷凍庫に積まれたアカイカの山/新鮮なスルメイカ/スルメ作り(山形県飛島にて)
    新鮮なスルメイカ(左)/冷凍庫に積まれたアカイカの山(中)/スルメ作り(右:山形県飛島にて)
    一覧へ戻る
  • Q31
    イカの養殖はできないのでしょうか?
    A

    海底近くに生活しているコウイカ類やダンゴイカ類は水族館などでは短期の飼育ができます。しかしケンサキイカやスルメイカのようなツツイカ類は後向きに高速で泳ぐため、水槽の壁に衝突して死ぬので、長くは飼えません。この頃はイカを飼っている水槽の壁にはストライプや不規則な模様を描いて壁を認識させるようにしています。

    イカの神経が常時実験に使えるようにするため電子技術総合研究所の故松本 元博士はイカが高速で泳いでも衝突しないようなドーナッツ型の飼育水槽を開発されました。テキサス農工大学ではこれをさらに大規模なレースウェイと呼ぶ陸上トラック型の水槽でカリフォルニアヤリイカの累代飼育まで成功しました。これは神経生理の実験のためなのでいいようなものですが、イカ一尾を作り出すのになんと200ドルもかかったそうです。

    飼育技術そのものはこのように皆無ではありませんが、餌の供給や共食いを避ける施設などを考慮すると経済性に見合うイカの(タコも)養殖はまだ困難と思われます。

    一覧へ戻る
  • Q32
    市場でも、釣り情報でも図鑑にない名前で呼んでいます。イカの名前ってそんなに色々あるのですか?
    A

    はい、そうですね。図鑑や学術報告には従来から用いられてきた和名をなるべく用いるようにしていますが、これらの書物では和名の他に万国共通の学名(ラテン語)を併記しますので大きな混乱は起きません。

    しかし、各地方には固有の地方名、また市場にはその市場だけに通用する市場名(マーケットネーム)があり、そのうえ釣り情報誌にはそれらとも異なる名前が「発明」されていたりして、1つのイカにも様々な名前(通俗名)があります。

    たとえばスルメイカですが、学名はトダロデス・パシフィクス(Todarodes pacificus)というデンマークのスティーンストラップ教授が1880年につけたものです。そもそもスルメイカという名前は「松前するめ」の主原料だったのでスルメイカと呼び習わされて定着したものと思われますが、北海道・東北などの主水揚げ地では「まいか」と呼びます。「ま」はマダイとかマイワシというように、その土地の本物というか主要産物につく接頭語ですから、北海道などではそれこそスルメイカが最も重要なイカと見なされているわけです。

    ケンサキイカの地方型 五島いか(左)ぶどういか(中)めひかりいか(右)
    ケンサキイカの地方型
    五島いか(左) ぶどういか(中) めひかりいか(右)

    ところが、関西方面で「まいか」といえばコウイカを指します。関西方面ではスルメイカより瀬戸内海などで獲れるコウイカが主要なイカなのでしょう。コウイカは、体の後端から甲の刺が出ているところから、「はり(針)いか」とも呼ばれますが、釣り人はもっぱら「すみいか」と呼びます。

    九州ではスルメイカのことを「とんきゅう」といいますが、九州でも地域によっては「つしまいか」、「ばかいか」、「くそいか」あるいは「がんぜき」などの方言名があります。関東方面ではスルメイカの若いのを「むぎいか」といいます。

    ケンサキイカは築地市場では「あかいか」と呼ばれます。しかし九州では赤の正反対の「しろいか」というからおもしろいではありませんか。ですからケンサキイカの乾製品は「白ずるめ」と呼ばれます。(「五島するめ」「一番するめ」「磨きするめ」とも。)また、四国から本州の沿岸で「まわしっこ」とか「めひかりいか」と呼ばれるのもケンサキイカです。釣り情報誌には「まるいか」と書かれています。ケンサキイカは海域によって多少見た目が異なるいわゆる多型現象が見られるので、名前が色々あるのかもしれません。

    アオリイカも方言名の多いイカです。そもそも「アオリ」というのは馬具の一種で鞍の下に敷くやや楕円形をした敷物で「障泥」という字を当てます。それは丸い鰭の形からの連想と思われますが、同様に「ばしょういか」「くついか」という地方があります。それに体が透き通っているからでしょうか「みずいか」などとも呼ばれ、アオリイカのするめは「みずするめ」と呼ばれます。

    障泥《あおり》とアオリイカ
    障泥《あおり》とアオリイカ

    市場名でもっとも普通に用いられている「もんごういか」は、瀬戸内海地方ではずっと昔からカミナリイカの方言名でした。ところが、遠洋トロールの大西洋産ヨーロッパコウイカが出回るとなぜかそれが市場で「もんごういか」と呼ばれ、それ以降東南アジアから主に冷凍ロールいかで輸入されるコウイカ類をおしなべて「もんごういか」と呼ぶ習慣になったようです。

    こういうふうに水産上重要なものほど、地域や市場によって色々な名前で呼ばれているのが実情です。

    一覧へ戻る

PICKUP

組合員イチオシの
イカ加工品をご紹介します

全国いか加工業協同組合

〒113-0034
東京都文京区湯島3-14-8
加田湯島ビル6階

TEL. 03-3834-3731
FAX. 03-3834-3735
e-mail. info@zen-ika.com

事務局詳細ページへ