イカ加工品の栄養特性

  • 1 高タンパク低カロリーの健康食
  • 2 栄養ドリンクにも負けない豊富なタウリン
  • 3 かみしめて噛み締めて歯やあごを強化

テレビの前でのカウチポテトはスナックやおつまみの代表的な食べ方スタイルです。そこでスナック、おつまみの定番品「さきいか」と「ポテトチップス」「バターピーナッツ」を比較しながら、賢い食べ方を考えてみましょう。

1. さきいかは高タンパク質です

私達は3大栄養素として、タンパク質[1]、脂質[2]、炭水化物[3]からエネルギーを摂取しなけれぱなりません。タンバク質の一日所要量は、身長、体重、運動量などで異なりますが、総エネルギーの12〜15%程度が適当とされています。一日2,200Kcal必要とする成人では、66〜84gのタンパク質が必要と言われています。「さきいか」100g当たりにはタンパク質が49.5gもあります。一方、「ポテトチップス」は4.7g程度しかタンパク質を含んでいませんし、「バターピーナッツ」も25.5gで「さきいか」の半分程度です。また、「さきいか」は必須アミノ酸を多く含むため、良質のタンパク質源になると考えられます。

タンパク質

食品に含まれいるタンパク質は20種類のアミノ酸から構成されています。体内で合成されない必須アミノ酸と含成される非必須アミノ酸からなっています。

タンバク質の働き
  • 1. 筋肉、内臓、骨、皮膚、血液などの体の成分に欠くことができません。
  • 2. 脂質の代謝を促進して、皮下脂肪の蓄積を予防します。
  • 3. 摂取したタンパク質の約30%が熱エネルギーになると言われています。
  • 4. 不足すると鉄が補給されないため、貧血の起因にも成ってしまいます。
  • 5. 摂取不足になりますとスタミナが低下し、体力がなくなってしまいます。

脂質

有機溶媒に溶ける物質を総称して脂質と言いますが、食品では大部分が脂肪で占めるため、脂質を脂肪と表現する場合が多いのです。なお、脂肪は大部分脂肪酸とグリセリンからできています。
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられますが、その種類は沢山有ります。一般的には飽和脂肪酸は血中コレステロールレベルを上昇させると言われ、逆に不飽和脂肪酸は血中コレステロールレベルを低下させる作用があると言われています。
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は不飽和脂肪酸の一種です。

必須アミノ酸

人間の体内で作ることのできない物質で、生命を稚持するためには人間は必ず食品から摂取しなければなりません。
イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの9種類。

2. さきいかは低脂肪です

一方、脂質の一日の所要量は総エネルギーの20〜25%と言われています。
「さきいか」100g当たりの脂質含有量は3.1g。「ポテトチップス」は35.2gと、「さきいか」の約11倍、「バターピーナッツ」は51.3gと約16倍もの脂質を含んでいます。
脂肪の取り過ぎは高血圧や糖尿病などの病気の誘因となります。一日2,200Kcalを必要とする人が、脂質から摂取するエネルギー量は440Kcal〜550Kcalと計算されます。脂質は1gにつき約9Kcalのエネルギーを持つため、脂質量で計算し直しますと約49〜61gとなります。
「バターピーナッツ」100gを食べた場合は51.3gの脂質を取り込むため、一日の脂質所要量の84〜104%を占めてしまい、明らかに脂質の取り過ぎになってしまいます。「さきいか」は3.1gしか脂質が含まれていませんので、脂質の取り過ぎの心配はありません。

また、糖質[4]の一日の所要量は総エネルギーの60%〜65%が望ましいと言われています。g重量に換算しますと、2,200Kcalを必要とする人では330g〜358gになります。
「さきいか」100g当たりの糖質含有量は17.3g。「ポテトチップス」は54.7g、「バターピーナッツ」は18.2gですから「ポテトチップス」は「さきいか」の3.8倍の糖質を含むことになります。糖質の取り過ぎは体脂肪として蓄積されるため、肥満や糖尿病の原因になります。

糖質

炭水化物のうち食物繊維を含まないものを糖質と言います。
糖質はブドウ糖や果糖などの単糖類、砂糖で代表される二糖類、澱粉で代表される多糖類を一括して糖質と言います。
筋肉運動や体温の保持などのエネルギー源として極めて重要な物質であります。
人間はグリコーゲンとして約1%体内に蓄積しています。また、血液中にはブドウ糖として含んでいます。
血糖値が低下(血液中のブドウ糖濃度が低くなる状態)しますと、疲労感が生じ、また、その状態がひどい時は意識が無くなるときもあります。また、脳のエネルギーとして重要な働きをもっています。

3. さきいかは高タンパク、低カロリーの健康食品です

このように「さきいか」と「ポテトチップス」「バターピーナッツ」を比較しますと、その栄養素には大きな違いの有ることが分かります。すなわち、「さきいか」はタンパク質が多く、脂質、糖質が少ない高タンパク低カロリーの食品と言えましよう。

さきいか・ポテトチップス・バターピーナッツの標準成分
さきいか
(10354)
ポテトチップス
(15103)
バターピーナッツ
(5036)
廃棄率 (%) 000
エネルギー (kcal) 279554592
エネルギー (kj) 1,1672,3182,477
水分 (g) 26.42.02.4
タンパク質 (g) 45.54.725.5
脂質 (g) 3.135.251.3
炭水化物 (g) 17.354.718.2
灰分 (g) 7.73.42.6
無機質 ナトリウム (mg) 2,700400120
カリウム (mg) 2301,200760
カルシウム (mg) 231750
マグネシウム (mg) 8270190
リン (mg) 430100380
鉄 (mg) 1.61.72
亜鉛 (mg) 2.80.53.1
銅 (mg) 0.270.210.64
ビタミン A(レチノール) (µg) 3(0)(0)
A(カロチン) (µg) (0)(0)6
A(レチノール当量) (µg) 3(0)1
D (µg) (0)(0)
E (mg) 1.76.42.3
K (µg) (0)1
B1 (mg) 0.060.260.20
B2 (mg) 0.090.060.10
ナイアシン (mg) 8.94.317.0
B6 (mg) 0.320.48
B12 (µg) 6.9(0)
葉酸 (µg) 17098
パントテン酸 (mg) 0.470.942.42
C (mg) 0150
脂肪酸 飽和 (g) 0.2511.449.90
一価不飽和 (g) 0.0812.7122.72
多価不飽和 (g) 0.438.3815.16
EPA・DHA (mg) 305
食物繊維 タウリン (mg) 360
コレステロール (mg) 370Tr
水溶性 (g) (0)1.10.5
不溶性 (g) (0)3.16.4
総量 (g) (0)402.06.9
食塩相当量 (g) 6.91.00.3

4. さきいかは海のスタミナたっぷり

また、イカは栄養ドリンクでおなじみのタウリンをたっぷり含んでいます。タウリンは魚介類、なかでもイカやたこ、貝類に多く含まれます。タウリンはコレステロール低下作用や肝臓強化作用、視力回復作用などいわゆる成人病予防に効果があるとされています。さらにイカは水産物にしか含まれていない高度不飽和脂肪酸であるEPA、DHAも含みます。EPAには血管を詰まらせないようにする作用(抗血栓作用)や血清総コレステロールを低下させる働きがあるとされています。DHAは脳機能に関与することが知られてきており、老人性痴呆症防止効果も期待されています。
勿論「さきいか」などイカ加工品にもこれらの栄養素が含まれています。

タウリン

アミノ酸の一つですが、その分子の中にS(イオウ)を含むため含硫アミノ酸とも言います。タウリンは特に魚介類に多量に含まれ、コレステロールと結びついて対外への排泄を促進する働きがあります。このため動脈硬化や高血圧の予防に有効とされています。そのほか

  • 血液中の中性脂肪を減らす:高脂血症や脂肪肝などの予防に有効。
  • インスリンの分泌を促す:糖尿病の予防と治療に有効。
  • 肝臓の解毒能力を高める:肝機能の賦活、アルコールによる肝臓障害の予防と解消に有効。
  • 視力障害の予防・改善:暗視野能力(暗いところでモノを見る能力)を高める、視力の衰えを防ぐ

かつて、イカやタコはコレステロールが多いことから敬遠される傾向がありました。しかし、コレステロールが多くても、高濃度に含まれるタウリンがそれを速やかに分解排出するため、むしろイカやタコは動脈硬化や高血圧、心筋梗塞などの予防に役立つことが、その後の研究で明らかになっています。

EPA/DHA

EPA(エイコサペンタエン酸)/DHA(ドコサヘキサエン酸)
高度不飽和脂肪酸の代表的な物質で、自然界の中でEPA/DHAそのものを含む食品は水産物に限られています。陸上動物の肉や植物にはEPA/DHAは含まれていません。

EPAには血管を広げたり、血小板の凝集を抑制する働きがあり、抗血栓作用を示すと考えられています。また、血清総コレステロールを低下させ、善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールを増加させる作用を示すといわれています。

いっぽう、DHAは脳の中で重要な働きをしていることが最近の研究で明らかになってきました。脳は大変重要な臓器で、そのため脳の中に入ることのできる成分は必要最小限度に制限されています。DHAはそこに入ることを許された数少ない成分のひとつなのです。これはつまり、DHAが脳の働きに不可欠なことを示しています。脳内のDHAは脳細胞の膜(リン脂質)に存在し、そこで神経細胞同士の情報伝達を円滑にする役割を担っています。すなわち、脳のネットワークを広げて、頭の回転をよくすることがDHAの主な仕事です。DHAは胎児の段階から蓄積されますので、妊娠中のお母さんが魚をたくさん食べることや、母乳で赤ちゃんを育てることの重要性が指摘されております。また、DHAは老人性痴呆症の予防にも効果が期待されています。

5. かみしめてかみしめて歯やあごを強化

軟らかい食品が好まれ、硬い食品を敬遠する傾向は、あご関節症を増加させる原因のひとつとされています。特に成長期において、歯やあごの骨、筋肉を発育させるために噛むことによる刺激が欠かせません。また、高齢化社会を迎えている現在では健康長寿を促進する方策として歯の健康の重要性がクローズアップされています。

さらに咀嚼の刺激により脳細胞の代謝活動が活発になることや、脳血流が増加することが明らかになっており、この結果老化に伴うシナプス(神経信号の伝達部位)の減少を予防する効果が期待されています。

するめ等のイカ加工品を食べると噛む回数が多くなり、咀嚼に強い圧力が必要となるため、歯やあごの強化にとても役立つのです。そして、健康な歯は健康な体を作る礎となるのです。

6. 居眠り運転防止のために

高速道路のような単調な状態で長時間運転すると「道路催眠」といわれる、目が開いていても安静時の閉眼状態で見られるα波が出ている状態になります。眠気を感じたドライバーに、(1)冷たいおしぼりで顔を拭く、(2)カラオケを唄う、(3)ガムを噛む、(4)コーヒーを飲む、の4通りの覚醒方法を行い、脳波の変化を測定したところ、全て実験直後には瞬間的に効果はあったが、10分間効果を持続したのは「ガムを噛む」行為だけであったという「居眠り防止テスト」の報告があります。

するめなどのイカ加工品はガムを上回る咀嚼力を必要とします。そのうえ、タウリンやEPA/DHAの視力回復作用が期待できるところから、居眠り運転防止の強い味方になってくれます。

参考資料

  • イカの栄養・機能成分:奥積昌世、藤井建夫編著、全国いか加工業協同組合発行
  • 知って得する魚の話、医師のための魚介藻類栄養辞典、保健婦さんのための魚の栄養辞典:(社)大日本水産会発行