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動物学的には足です。食べる時はイカの足とか「ゲソ」(下足から)といいますでしょう? しかし、イカはその足で餌を捕まえたり、雌を抱きかかえたり、物を運んだりできるので、習慣的に「腕」といいます。私たち人間も本来は4本足ですが、両方の腕のことを誰も「前足」とはいわないのと同じことです。
イカの場合は背中側から腹側に向かって左右第一腕から第四腕まで4対の腕があり、第三腕と第四腕の間から伸縮自在の餌捕獲用の触腕《しょくわん》という特殊な腕が出ていますので、俗に「タコは8本、イカは10本」というわけです。
10本足のイカ(上:スルメイカ)と
8本足のイカ(下:タコイカ)
でも、イカのなかには、触腕を持たない8本足のイカがいます。たとえばタコイカやヤツデイカの仲間がそうです。しかし、彼らも小さな子どもの間は触腕を持っていて10本足ですが、成長とともに自然に脱落してしまうのです。また、なかには産卵を終える頃、触腕が切れてしまうイカもいます。
ですから、触腕はイカにとって餌を捕るために大切なものではありますが、どうしてもなくては生きていけないというものではないような気がします。その証拠に漁船に釣られた拍子に触腕が切れてしまっても命永らえたイカが次の時にまた釣り針にかかって釣られることからもわかります。